CRAFTINGをご覧の皆様、こんにちは。
2022年は、絵本「ピーターラビットのおはなし」が
イギリスで出版されてから120周年を迎える年だそうです。
今週末の3月26日(土)から東京の世田谷美術館では
記念のピーターラビット展が開催されるそうですし、
芥川賞作家の川上未映子さんが絵本ピーターラビットの新訳を
上梓されるなど、記念グッズの発売もスタートし
あらたなムーブメントになりつつあります。
CRAFTINGのレッスンでもピーターラビット™のシャドーボックスづくりをご案内しています。
今週はその物語と作者についても触れながら、レッスンをご紹介いたします。
原作の作者ビアトリクス・ポター™の軌跡
1893年、ビアトリクス・ポターが27歳だった頃、スコットランドのダンケルドにある
イーストウッド・ハウスに滞在していたときに昔の家庭教師の息子ノエル・ムーアに
4ひきのウサギのお話しの絵手紙を送ったことから、ピーターラビットの物語が誕生します。
ノエルは小児麻痺で病床に伏していたそうで、
お見舞いの気持ちを込めて作られたお話しだったと今では解釈されているようです。
マクレガーさんの畑に入って野菜を食べてしまい、追いかけられてしまううさぎのピーター。
家に帰ってお腹の具合が悪くなってしまい、
おかあさんからベットでカモミールの煎じ薬を飲まされる絵が描かれていますが、
そのシーンを描きながら、ビアトリクスは療養している、
ノエルへの励ましのメッセージをしたためていたのでしょう。
LESSON1 ピーターとお母さん
先のお話しでご紹介したマクレガーさんの野菜畑に
ピーターが忍び込んでしまう物語のワンシーンが
シャドーボックスのLESSON1でお楽しみいただけます。
「ピーターとお母さん」はパーツが大きく枚数が少ない簡単な内容ですので
初心者さんにも、春休みお子さまといっしょに楽しめるハンドクラフトと
してもおすすめしたいレッスンです。
<ピーターラビットのおはなしから>
~Now Run Along, and Don't Get Into Mischief~
お母さんはいたずら好きのピーターにあることを話しました。
「マクレガーさんの家のお庭には入ってはいけないよ」
自費出版からはじまった「ピーターラビットのおはなし」
ノエル少年に送った絵手紙をもとに、草稿本を制作して絵本の形での
出版を計画したビアトリクスですが無名作家の作品を引き受けてくれる出版社は
どこにもなかったそうで、ついに自費出版で刊行を決意します。
口絵だけがカラーで挿絵はすべて線描画の絵本(白黒)だった初版本は、
ロンドンの挿絵画家の作品を多く出版していた版元の目に留まり、
オールカラーで増刷されることが決まります。
私たちにも馴染みのスカイブルーのジャケットを着た
『ピーラーラビットのおはなし』は発売後すぐに増刷され
ビアトリクスは、一躍ベストセラー絵本作家となります。
彼女のあきらめなかった気持ちが、ピーターラビットのお話しを
現代の私たちへと届けてくれたのですね。
LESSON2 ラディッシュを食べるピーター
同じく、「ピーターラビットのお話し」より、ラディッシュを食べるシーンを
シャドーボックスのなかに描く作品づくりをお楽しみいただけるのがLESSON2。
2作品目は細かくパーツの多い作品にチャレンジいただけます。
細いパーツが出てくるのでカットも少しだけ難しくなりますが、
動画を見ながら一緒に手を動かしてみませんか?
<ピーターラビットのおはなしから>
~Peter Ate Some Radishes~
忠告を無視してマクレガーさんのお庭に忍び込んで
ラディッシュを食べてしまったピーター。
お母さんに「行ってはいけない」と注意されたばかりなのに…。
ビアトリクス・ポター™の夢の実現
作者のビアトリクス・ポター™の人生はピーターラビットとともに
テーマパーク、ミュージアム、ビアトリクス・ポター™資料館と
さまざまな展示の場で紹介されています。
ビアトリクスは絵本の印税や絵本に登場する人気キャラクターのグッズを
販売して得た資金で、自然豊かな約4300エーカーの土地(東京ドーム約360個分)を購入しました。
そして、彼女の遺言により、そのほとんどすべてが世界最大級の環境保全団体
ナショナル・トラストに寄贈されています。
2017年、そのエリアである英国・湖水地方は世界文化遺産に登録されました。
彼女が広大な土地を購入したのは、後世の人々に美しい自然を残すためだったそうです。
ピーターラビットのお話しも魅力的ですが、
ビアトリクスの人生もまた、彼女の意志によって拓かれた物語として、今もなお輝いています。
紙を重ねていく立体アート、シャドーボックスの起源
最後にシャドーボックスについて、もう少しご紹介させてください。
シャドーボックスはデコパージュという手工芸の中の一つの技法になります。
デコパージュは17世紀イタリアで家具職人の仕事として始まったと言われており、
当時憧れの的であった東洋の螺鈿や蒔絵等を模倣して家具に装飾したり絵付けをしていました。
18世紀に入るとヴェニスの家具職人の間ではワトー、ブーシェ等のロココ様式の画家の銅版画に
彩色しそれを切り抜いて家具に貼るという技法が盛んに行われるようになったのです。
印刷技術が進み絵画をデコパージュした家具が嫁入りの道具となり
フランスを始めヨーロッパ各地に広がっていきました。
19世紀にはアメリカに渡り、切り抜いたプリントをただ貼るだけではなく、
立体的に造形するシャドーボックスに発展したと言われています。
最後に、シャドーボックスの魅力について
1. 紙とは思えない立体感
シャドーボックスで使う紙は分厚く丈夫な素材を使用します。
シリコンを紙(プリント)の間に置くことによって高さを出していきます。
2. 陶器のような質感と高級感
仕上げにニスやUV硬化液を施すとより美しく、作品に磨きがかかります。
※講座ではUV硬化液を使います。
3. 命があるような躍動感
モデラーという道具を使って、パーツに丸みや線を加えて
ひとつひとつに動きを付けます。動物や植物がまるで
動いているような躍動感を感じることができます。
手芸初心者や絵心がない方でも、身近にある紙(プリント)を
カットし重ねるだけで誰でも簡単に美しい作品を仕上げることができる楽しいレッスンです。
原作者のビアトリクスは、ピーターラビットのお話しの本の仕様にもこだわりがあったそうです。
「子どもの手にすっぽりと入る、手のひらのサイズであること」
私の子どもの頃も、娘がこの本を手にとることのできる2022年も変わらない本のサイズ。
彼女の子どもたちに寄り添う気持ちが、120年以上も受け継がれているのですね。
シャドーボックスづくりをお楽しみいただきながら、
ビアトリクスの人生とピーターラビットの世界をご堪能ください。