作家インタビュー vol.172021.05.27
刺しゅう作家 atelier de nora ながたに あいこさん
CRAFTINGをご覧いただいている皆様、こんにちは。
今週は、植物をモチーフにした
ボタニカル刺繍のレッスンをご紹介してくださっている
atelier de nora ながたに あいこさんの
第二回目のインタビューです。
「植物をモチーフにしたボタニカル刺繍 〈ポケットティッシュケース〉」
今回は、よく使う刺しゅう糸の種類や、好きな色からお伺いしました。
1色の刺しゅう糸には、もっと沢山の色が隠されている
「25番刺しゅう糸を使うことが多いです。
シンプルな材料で多彩な表現ができる所が好きです。
とる糸の本数、刺す角度、ステッチの種類、隣の糸の色、
そしてその組み合わせによって、
同じ色の糸でも、色合いが少し違って見えます。
ベースになる布の色によっても見え方は変わってくるので、
1色の刺しゅう糸には、もっと沢山の色が隠されていると思います」
主役の色を活かす、渋い名脇役のような色が大好き
「好きな色は、沢山ありますが、
『グレーにもブルーにも見える』
『ピンクにもベージュにも見える』
そんな曖昧な色が好きです。
それから、メインでは使いませんが、
刺し色にすると主役の色を活かしてくれる色というのがあります。
そんな色は、渋い名脇役のようで、大好きです」
▲「布は白・ナチュラル・ベージュを使うことが多いです。
ほんの少しの色や素材感の違いで、糸の見え方、全体の雰囲気が変わります」
手芸を始めたのはいつ頃だったのでしょうか?
子供のころ好きだった手づくりや、思い出に残る手づくりエピソードについてもお伺いしました。
母から学んだ「世界にひとつだけのもの」をつくる喜び
「いつから始めたかは覚えていませんが、母が洋裁学校を出ているので
子供の頃から、お洋服やお人形を作ってくれていたこともあり、
自分も自然と手仕事をしていたと思います。
フェルトのマスコット作りや、かぎ針編みをよくしていました。
刺しゅうでは、チェーンステッチが大好きで、
自分でリンゴや猫の絵を描いて、チェーンステッチでなぞったものを
枕カバーにして、祖母にプレゼントした事があります。
我ながらよくできた! と子供心に思ったことはよく覚えています。
その頃のことを思い出すと、当時から、
見本通りに作る、ということはしていませんでした。
家にある材料で、自分で考えてアレンジして作る。
「世界にひとつだけのもの」をつくる喜びは、
母から教わったと思います。
▲「本に掲載した作品を自分でアレンジした作品です。
図案のサイズを変えたり、糸の色を変えただけで、表情が変わることが面白いです」
刺しゅうを始めたきっかけについても、お伺いしました。
針と糸と布、ハサミさえあれば、いつでもどこでも
「もともと手仕事全般が好きでしたが、
特に刺しゅうに取り組むようになったきっかけは、
2010年に雑貨店を始めたことです。
何か自分でも手仕事がしたかったので、お店番中にできることは? と考えたとき
針と糸と布、ハサミさえあれば、いつでもどこでもできる刺しゅうかな、と思いました。
お店番中ですので、カウントステッチは難しいですが、
フランス刺しゅうのようなステッチなら途中手を止めても問題ないですし、
お客様と話しながらでもできる。
何より、刺しゅうがお客様との会話の糸口になることも嬉しかったです」
▲「製作時間は、日によって違いますが、針を持たない日はほとんどないと思います。
少ない日で30分~1時間、多くて15~16時間くらいでしょうか…」
「刺しゅうのここが好き!」というポイントがあれば教えてください。
自分の世界が豊かに多彩に、広がり続けていく
「刺しゅうの好きなところ、沢山あります!
いつでもどこでもシンプルな材料と道具で、
多彩な表現ができること。
絵心がなくても、描いた絵をなぞって刺しゅうするだけで、
全く別の魅力が生まれるところ。
そして同じ図案でも、刺す人によって、
出来上がる刺しゅうがそれぞれ違う個性と魅力を持つこと。
日常で使えるものを作れることで、
日々の暮らしが豊かになり、ものを大切に使いたくなること。
植物など、モチーフへの興味関心が、自分の世界を広げること…」
▲ atelier de noraさんの刺しゅうへの愛があふれるInstagramの世界より。@atelier_de_nora
◆作家プロフィール atelier de nora ながたに あいこさん
公益財団法人日本手芸普及協会刺しゅう指導員。
使う人が手に取って眺める度に、楽しい気持ちになるような
物づくりを心がけている。
刺繍作品の制作、イベント・企画展出品、オーダー制作、
刺繍教室を中心に活動する「atelier de nora」を主宰。
著書に『春夏秋冬。ボタニカル刺繍で彩る服と小物』(KADOKAWA)がある。
- [ HP ] https://nagatani9.wixsite.com/mysite
- [ Instagram ] https://www.instagram.com/atelier_de_nora/
atelier de noraさんは「まだまだありそうですが、この辺で」と今回のインタビューを締めくくってくださいました。
刺しゅうへの思い、愛があふれているInstagramの画像を今週のマガジンのおわりにご紹介させていただき、来週のインタビュー記事へとつなげたいと思います。
ご覧いただき、ありがとうございました。
写真:atelier de nora ながたに あいこさん