ハンドメイドの初心者さん向け『刺しゅうの基本』

ハンドメイドの初心者さん向け『刺しゅうの基本』
ハンドメイドのオンラインレッスンCRAFTINGではハンドメイド初心者さんを応援しています。
今までやってみたことがないクラフトにも安心してお試しいただけるよう
各クラフトの基本をご案内して参ります。第一回は刺しゅうの基本です。
刺しゅうのやり方が知りたいという方向けに刺しゅうの成り立ち、
刺しゅうの種類、ステッチの種類をご紹介します。

 

①刺しゅうとは

刺しゅうはごく身近な手芸として親しまれています。
世界各国にあり、素材や技法もさまざまな刺しゅうですが、
ここでは一般的なヨーロッパ刺しゅうについてご案内いたします。
 ヨーロッパ刺しゅうの歴史は古く、衣類に最初につけられた装飾模様と考えられています。刺しゅうの最も古いものとしては、古代エジプト時代の墓やピラミッドからビーズ刺しゅうの布が発掘されています。また、この時代、衣服や家具にアラベスク模様が刺しゅうされていたことが記念碑に書かれていることで確認されています。古代オリエントではもっとも盛んに行なわれ、バビロニア人によって完成されたと考えられています。これが、ギリシアでも行われ、ローマ時代に引き継がれ、ヘレニズム文化を経て、ビザンチン時代へと引き継がれていく中で、刺しゅうは僧院芸術や宮廷芸術の一端として栄えていきました。

 

17世紀になると、フランスのルイ14世の宮廷を中心に、衣服、カーテン、家具などに用いられていました。近世になると、刺しゅう工芸は次第に工業化し、美術品としては衰退していきました。けれど、特別な階級のものだった刺しゅうも誰もが手芸として楽しめるようになり、民族衣装にその美しさをみることができるようになりました。
宗教や特別な階級の中で発達した刺しゅうは、ぜいたくな美術品であり、その階級のステイタスシンボルでもあったわけです。
「復刻版 かわいいヴィクトリアン刺しゅう」 日本ヴォーグ社刊より

「復刻版 かわいいヴィクトリアン刺しゅう」 日本ヴォーグ社刊より

※参考図書 「刺しゅうガイド 技法いろいろ」 日本ヴォーグ社刊

 

②刺しゅうの種類

 

ヨーロッパ刺しゅう

ヨーロッパ刺しゅうは、色糸の組み合わせとステッチの使い方で、繊細なものからラフなものまで、変化のある美しい作品ができ、この豊かさ、多彩さは、他の刺しゅうにないほど広範囲なのが特長です。
ヨーロッパ刺しゅうの種類は豊富で、100種類以上あるといわれています。ステッチの名称は形から連想してつけられたものが最も多く、刺しゅうの生まれた国名、土地名にちなんで名づけられた名称もあります。

リボン刺しゅう

18~19世紀の西欧、華やかにまとった貴婦人の衣装には、美しいリボン刺しゅうが施されていました。イタリアのボローニアにはじまったリボンの歴史は、1517年フランスのリヨンの南西、サンデチエンヌにその中心を移し、以後たくさんのリボンが生産されました。リボンにはいろいろな種類があります。ステッチの針運びは刺しゅう糸と同じですが、幅があるので、引き加減に注意して刺します。

リボン刺しゅう
リボン刺しゅう

「刺しゅうガイド 技法いろいろ」 日本ヴォーグ社刊より

ビーズ刺しゅう

ビーズやスパングルを使った見た目も豪華な刺しゅうです。刺し方は一般的なヨーロッパ刺しゅうと同じです。

リボン刺しゅう

「こんなとき あんなとき 刺しゅうなんでもQ&A」日本ヴォーグ社刊より

アップリケ

アップリケとは「貼る、つける」という意味で、土台布の上に好みの形に切り抜いた小さい布やフェルトなどを置いて刺しゅうやミシンで縫いつける簡単な手芸です。フェルトなどは縫い代をつけずにステッチで周りを飾り、薄地の場合は縫い代を折り曲げてたてまつり。さらに綿を入れてふくらみをもたせた立体アップリケなどがあります。

スモック刺しゅう

スモッキングは、布地にひだを寄せた折り山に刺す刺しゅうです。スモック(smock)とも呼ばれ、17世紀ごろの直線裁ちにした衣類の余分な布をしわづけして身にまとっていた婦人用肌着でした。それが装飾的になり、北欧や東欧で民族衣装として生き続けています。現在でも、薄手の木綿からウールまで、無地・水玉・縞・格子などを用います。

リボン刺しゅう

「こんなとき あんなとき 刺しゅうなんでもQ&A」日本ヴォーグ社刊より

スエーデン刺しゅう

スエーデン刺しゅうの特徴は、布目を数えながら布をすくって刺す刺しゅうです。先の曲がったスエーデン針で、織目の下をトンネルのようにすくっていき、さらに階段のように布目を上がり下がりすることによって模様ができていきます。

リボン刺しゅう

「新装版 スウェーデン刺しゅう」日本ヴォーグ社刊より

クロスステッチ

古代ビザンチン時代に、イタリアを経てヨーロッパから全世界に広がったという古い歴史を持つ刺しゅうです。布目を数えながら表面に2本の糸を交差させます。糸は中央で交差し、交差の方向を一定に並べて刺します。

刺しゅうの刺し方:クロスステッチへ

リボン刺しゅう

「基礎シリーズ 新・刺しゅう」 日本ヴォーグ社刊より

レジェール刺しゅう

Le tissue leger(ル・ティシュ・レジェール)は、フランス語で軽やかな布、薄い布という意味ですが、フランス刺しゅうの数多いステッチの中でも、シャドウステッチを使って刺した作品…、布を通して透けてみえる、何ともいえない優しい感じになります。シャドウステッチを中心に、薄手の麻などを使ってつくるパンチワーク、織り糸のかかり方で大変面白い透かし模様をつくっていくアジュール刺しゅうの3つが組まれています。

ニードルポイント

キャンバス地に刺しゅう糸や毛糸でハーフクロスやテントステッチをして布全体をおおいつくす刺しゅうを「ニードルポイント」と呼んでいます。以前は「タピストリー」「ハーフクロス」「キャンバスワーク」「ニードルワーク」などと呼ばれていたものです。

カットワーク

カットワークは、古くから教会の祭服や貴族の衣類に使われた刺しゅうで、16世紀頃のものからイギリスの美術館などで見ることができます。図案をボタンホール・ステッチ、または巻きかがりでバー(糸の端)を渡し、その部分の布をカットするだけの簡単なものです。

ハーダンガー刺しゅう

ハーダンガー刺しゅうは、ノルウェーのハンダンゲル(Hardanger)地方の女性たちの間でつくり出されたもので、格子ドロンワークの一種です。クロスターブロックを使うのが特徴で、小さなブロックにサテン・ステッチを刺し、糸を抜いて四角形の格子を残します。残った織り糸を、かがったり、織ったりして、バーの形をつくり、四角形の空間には、いろいろな種類のフィリング・ステッチが入ります。図案はおもに幾何学模様になります。

ハーダンガー刺しゅう

「すてきなハーダンガー刺しゅう」日本ヴォーグ社刊より

刺し子

刺し子は重ね合わせた布に、補強と保湿のために刺し縫いしたものがはじまりのようです。ほつれた部分に布を重ねて刺し子をし、丈夫にすることで、当時は大変貴重品だった布を大切に使いました。定番は藍色の木綿地に木綿の色糸で刺します。伝統的な模様も数多く受け継がれていますが、最近ではカラフルな色合いのものや、デザインを楽しむこともあります。

刺し子

「ヴォーグ基礎シリーズ 新 刺し子」
日本ヴォーグ社刊より

モラ(リバースアップリケ)

中南米サンブラス諸島のクーナ族による伝統的な民族手芸です。リバースアップリケの手法を用い、幾重にも布を重ねて色鮮やかに人や動物などを表現しています。躍動感あふれる大胆な構図の中に、クーナ族の象徴や民族性が感じられます。

参考図書

「こんなとき あんなとき パッチワークキルトなんでもQ&A」 日本ヴォーグ社刊
「基礎シリーズ 新・刺しゅう」 日本ヴォーグ社刊
「刺しゅうガイド 技法いろいろ」 日本ヴォーグ社刊
「こんなとき あんなとき 刺しゅうなんでもQ&A」 日本ヴォーグ社刊
「バイブルシリーズ 刺しゅうステッチ」 日本ヴォーグ社刊

 

③ステッチの種類 

ランニング ステッチ

線刺しのステッチ。針を出して入れるの動作を繰り返して刺し進みます。

ランニング ステッチの手順

スレッデッド ランニング ステッチ

ランニングステッチした針目に別糸をくぐらせていきます。

スレッデッド ランニング ステッチの手順

巻きつけ ランニング ステッチ

ランニングステッチした針目に別糸をくぐらせ、巻き付けていきます。

巻きつけ ランニング ステッチの手順

バック ステッチ

線刺しのステッチ。1目分戻って、2目分先に針を出す動作を繰り返して進みます。

バック ステッチの手順

スレッデッド バック ステッチ

バックステッチした針目に別糸をくぐらせていきます。

スレッデッド バック ステッチの手順

巻きつけ バック ステッチ

バックステッチした針目に別糸をくぐらせていきます。

巻きつけ バック ステッチの手順

ストレート ステッチ

縦に一本刺すだけのステッチ。向きや目の長さで様々な表現ができます。

ストレート ステッチの手順

アウトライン ステッチ

直線の他、カーブを表現する時によく使用される線刺しのステッチ。

アウトライン ステッチの手順

スレッデッド アウトライン ステッチ

アウトラインステッチした針目に別糸をくぐらせていきます。

スレッデッド アウトライン ステッチの手順

サテン ステッチ

ストレートステッチを平行に並べて刺し、面を埋めていきます。

サテン ステッチの手順

ロング アンド ショート ステッチ

ストレートステッチの長い目、短い目を交互に隙間なく刺し、面を埋めていきます。

ロング アンド ショート ステッチの手順

チェーン ステッチ

鎖のようなループを繰り返すステッチ。太くしっかりしたラインを表現できます。

チェーン ステッチの手順

フレンチ ノット ステッチ

小さな結び目を作るステッチ。動物の目元や細かな模様の表現に使用されます。

フレンチ ノット ステッチの手順

フライ ステッチ

Y字型に刺すステッチ。小さな虫(フライ)がモチーフ。目の長さを変えると違った表情になります。

フライ ステッチの手順

コーラル ステッチ

小さな結び目を作りながら刺し進みます。

コーラル ステッチの手順

ジャーマン ノット ステッチ

最初の刺し目に糸を何度かくぐらせて立体的に仕上げます。基本は全体を三角形に。

ジャーマン ノット ステッチの手順

レイジー デイジー ステッチ

作った輪をとめて、デイジーの花びらを作ります。

レイジー デイジー ステッチの手順

バリオン ステッチ

針に糸を巻き付けるステッチ。立体的に仕上がります。

バリオン ステッチの手順

バリオン ノット ステッチ

バリオンステッチの刺し終わりを刺し始めの近くにし、小さな玉を作ります。

バリオン ノット ステッチの手順

コーチング ステッチ

芯となる糸を別糸でとめていくステッチ。芯に使用する糸を毛糸などに変えても。

コーチング ステッチの手順

ブランケット ステッチ

ガイドとして、平行線を引いておくと分かり易いです。

ブランケット ステッチの手順

フェザー ステッチ

フライステッチを左右交互に刺し進める方法です。

フェザー ステッチの手順

クロスステッチ

布の織り糸を数えながら刺すステッチ。一般的に、織り目が数えやすい粗い平織りの布を使います。

クロスステッチの手順

参考図書 「基礎シリーズ 新・刺しゅう」 日本ヴォーグ社刊

 

④刺しゅうの用具


・25番刺しゅう糸

細い糸が6本より合わされている刺しゅう糸。何本か引き揃えて用いるため「〇本どり」といいます。25番刺しゅう糸は1カセ8mで綿100%です。

糸切りばさみ

刺しゅうの糸を切る用の先が尖ったはさみです。

布切りばさみ

刺しゅうの布を切るのに用います。

欧風刺しゅうでは針先が尖った刺しゅう針を使います。クロスステッチでは針先が丸い針を使用。25番刺しゅう糸の本数によって針の太さを選びましょう。

しつけ糸

布の中心に印をつけたり、布端の始末をするときに使います。〇チャコペン…布に直接印をつけるときに使います。水で消えるタイプのものがよく用いられています。

トレーサー

セロファンの上から図案をなぞって布に写すときに使います。

待ち針

図案を写すときなどにズレを防止するために使います。

トレーシングペーパー

半透明の複写紙で、図案を写すときに使います。刺しゅう図案の上にトレーシングペーパーをのせて、なぞるだけで綺麗に写ります。

セロファン

図案を写すときに使います。きちんと写るように強い力で刺しゅう図案をなぞると、トレーシングペーパーが破れてしまうことがあります。1番上にセロファンを重ねることで、力を入れても破れず、きちんと刺しゅう図案を写すことができます。

手芸用複写紙(チャコペーパー)

しつけに使う複写紙です。 写したしるしは水で簡単に消すことができます。

 

 

 

 

『刺しゅうの基本』、いかがでしたか? 

刺しゅうの基本を学んだら、ぜひ作品づくりをお楽しみください。

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